『異邦人』はアルベール・カミュの代表作の一つで、1942年に発表された小説です。
カミュがノーベル文学賞を受賞したきっかけになったとも言われています。
『異邦人』は、実存主義と結びついたカミュの哲学、不条理主義の例として紹介されることもあるため、教養としても理解しておきたい作品です。
比較的短い小説(窪田啓作訳の新潮文庫版で約130ページ)ではありますが、少し読みづらいとの意見があります。
なぜなら、主人公ムルソーが、一見すると共感しづらい人物として描かれているからです。
小説は、そんなムルソーの一人称視点で進行するため、登場人物との関係もわかりづらくなっています。
そこで、この記事では、『異邦人』のあらすじや人間関係を少しでもわかりやすくするため、人物相関図と登場人物の解説をまとめました。
これから『異邦人』を読みたいけど内容が理解できるか自信がない方、本を開いてみたけど読みづらさを感じた方は、一度たちどまって人物相関図からご覧ください。
人物相関図とは、名前のとおり人物の関係を視覚化した図のことです。
人物相関図を見ることにより、複雑な人間関係でもひと目で理解することができます。
人物相関図に関するほかの記事はこちら。長編小説もわかりやすくまとめています。
主人公。この小説は、ムルソーの一人称で記述されている。
場末町の大通りに面したアパルトマンの2階に住んでおり、同じ階にレエモンとサラマノがいる。
過去にパリで生活していたことがある。
環境からの刺激や自分の感情には素直で、ごまかしたり嘘をつかない誠実な人間であることがうかがえる。
ムルソーの人となりを知る手がかりとして、好きなもの、嫌いなもの、どちらでもいいことを書きだしておく。
- ママン
- たばこ
- ミルク・コーヒー
- 平日正午、昼食に行くため事務所を出るとき
- 日曜(好きではない)
- 事務所でみんなが使う、夕方にすっかり湿った回転式の手拭い
- 警官
- 女を買うこと
- 死んだママンの前でたばこを吸っていいかどうか
- レエモンの仲間になりたいかどうか
- パリで生活したいかどうか
- マリイと結婚したいかどうか
孤独とは何なのか|小説で印象に残った秀逸な表現集では、ラストシーンのムルソーの孤独について考察しています。
小説は、このムルソーの母の死から始まる。
アルジェから80kmのマランゴにある養老院に、3年前に入っていた。
養老院でトマ・ペレの許婚となる。
ムルソーによると、年齢は60歳ぐらいである。
ムルソーの元同僚だったタイピスト。
ムルソーは、ママンの葬儀の翌日に海水浴場でマリイと再会し、フェルナンデルの喜劇映画を観て、仲を深めていく。
マリイはムルソーとの結婚を望むようになる。
刑務所に収監されたムルソーに面会へ行くが、妻ではないためそれ以降の面会は許可されなかった。
裁判ではムルソーを擁護しようとするが、意図しないことをしゃべらされたことで泣き出してしまい、退廷させられる。
ムルソーと同じ階に住む男。
自称「倉庫係」だが、女衒(売春斡旋業)を生業としている。
かなり小柄で肩幅が広く、拳闘家の鼻をしている。
いつも非常にきっちりした身なりである。
裏切られた情婦をはりたおし、警察沙汰になるが、情婦の兄のアラビア人とその一団につけ狙われるようになる。
裁判では、被害者の妹をはりたおしたのは自分で、被害者が恨みを抱いたのは自分に対してであること、ムルソーが加害者となったのは偶然であることを訴え、ムルソーのことを擁護しようする。
ムルソーと同じ階に住む老人。
顔に赤みをおびた瘡蓋(かさぶた)があり、毛は黄色くて薄い。黄ばんだくちひげ。
猫背。
晩婚だった妻に先立たれた後、8年前からスパニエル犬を飼っている。
1日に2回、11時と18時に犬を散歩に連れて行く。
サラマノは犬のことをののしり叩くが、皮膚病と老衰をいたわっていた。
犬がいなくなったことでムルソーに相談する。
裁判では、ムルソーが誠実で、犬の件で親切だったことなどを話す。
マダム・ムルソーが養老院でもった許嫁。
細い白髪のあいだから、たるんで、縁のくずれた妙な耳がのぞく。
院長によると、しばしばムルソーの母とペレは、夕方、看護師に付き添われて村まで散歩に出ていた。
歩くときに軽くびっこをひき、葬儀の行列で遅れ、追いついたときには苦痛で失神した。
ムルソーの裁判では、ムルソーとは葬儀の日に一度会っただけであること、苦痛のため何も見ていないことを話した。
レエモンのことをつけ狙う。
ムルソーは、彼にピストルを5発撃ちこむ。
ちなみに、服装は菜っ葉服(作業服のようなもの)である。
レエモンの情婦。
レエモンは彼女に食費などを渡していたが、裏切られたことがわかると血を見るとほどなぐった。
さらに懲らしめるために手紙で呼び出し、レエモンの部屋でなぐっていたところを警察に踏み込まれる。
逮捕されたムルソーを取り調べた予審判事。
するどい顔立ちで、青い眼は落ちくぼみ、丈が高く、灰色の口ひげを長くのばし、半白の髪をあふれるように波打たせている。
口をひきつらす神経質なクセがある。
逮捕されたムルソーの弁護人。
まるまるした小柄な男。まだ若く、髪を丁寧になでつけている。
裁判でムルソーを糾弾する検事。
鼻眼鏡をかけ、やせすぎな長身の男。
ムルソーがよくいくレストランの店主。
ムルソーの裁判に証人として呼ばれる。
ムルソーの雇い主。
事務所は海に面しており、積み上げられた船荷証券が山のようにある。
パリに出張所を設けることを計画し、ムルソーに持ちかけるが断られる。
野心にかけるムルソーの態度はビジネスにおいて不都合である、という不満を抱く。
マダム・ムルソーが入っていた養老院の院長。
小柄な老人でレジオン・ドヌール(フランスの勲章)をつけている。
ムルソーの裁判に証人として呼ばれ、ムルソーが葬儀に日に冷静だったこと、ムルソーが母の年齢を知らなかったことに驚いたと話した。
ムルソーが養老院に行ったときに案内してくれた門衛。
白いひげ、明るい青の美しい眼、顔色はやや赤みがかっている。
64歳のパリっ子で、養老院にきて5年になる。
ムルソーの裁判に証人として呼ばれ、ムルソーが棺の前でタバコを吸い、ミルク・コーヒーを飲んだことなどを話した。
ムルソーと同じ事務所の発送部で働いている。
ムルソーが黒いネクタイと腕章を借りた人物。
数ヶ月前に叔父を亡くした。
ムルソーの裁判に証人として呼ばれ、不運なできごとだと話す。
レエモンの友人で、二人は一緒に生活をしたこともある。
背丈も肩幅もがっちりした大男である。
アルジェ郊外の海浜のはずれに木造の別荘を持っていて、妻といっしょに休みの土日を過ごしている。
「おまけに」と言い足すクセがある。
ムルソーの裁判に証人として呼ばれ、律儀で誠実な男だと話す。
ムルソーがセレストのレストランで晩飯を食べているとき、相席してきた小柄な女性。
ジャケットを着ている。
裁判で死刑を宣告されたムルソーに繰り返し面会を拒絶されるが、ある日、部屋を訪ねてくる。
神を信じないムルソーを無神論から引き離そうとするが、ムルソーを激怒させる。
小説『異邦人』を読むことはできたでしょうか?
『異邦人』は、教養としてもおさえておきたい作品です。
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