【カラマーゾフの兄弟】第4部各章の人物相関図とあらすじ

この記事では、ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」の第4部のあらすじを、章ごとに人物相関図を使って解説しています。

「カラマーゾフの兄弟」の登場人物の基本的な関係については、まずはこちらの記事をご覧ください。

【カラマーゾフの兄弟】人物相関図であらすじを理解する

目次

第10編 少年たち

第1章「コーリャ・クラソートキン」の人物相関図とあらすじ

この章では、サブタイトルにもあるとおりコーリャ・クラソートキンの生い立ちについて語られる。

コーリャは、生まれてすぐに父が死に、未亡人となった母アンナに育てられる。勇敢で強く、成績もよく、ひどく自尊心の強い少年だった。

7月の夏休みに、年上の仲間たちとの賭けで、深夜の列車が通過するときにレールの間にうつぶせになる、という命知らずな悪ふざけを行う。この鉄道事件のあと、母アンナとの関係、アンナに恋する教師ダルダネロフとの関係に変化があらわれる。

第2章「子どもたち」の人物相関図とあらすじ

11月のある朝、コーリャは、向かいに住む医師一家の女の子ナースチャと男のコスチャの子守りをすることになる。

コーリャは、大事な私用の時間がさしせまる中、女中アガーフィアの戻りを待つ。

第3章「生徒たち」の人物相関図とあらすじ

やっと外に出たコーリャは、スムーロフと合流し、病気になったイリューシャを見舞うため、スネギリョフの家へ向かう。

途中、市のたっている広場を通過するとき、百姓、物売りのマリアに突然声をかけたり、からんできた若者を煙に巻いたりする。

11時半をすぎ、スネギリョフの家の近くまで来たところで、コーリャはスムーロフに、カラマーゾフを呼び出してくるよう命ずる。

第4章「ジューチカ」の人物相関図とあらすじ

コーリャは、以前から興味のあったアリョーシャに会い、子どもっぽく見えないようふる舞う。イリューシャとのこれまでの関係、イリューシャのいたずらで、ジューチカがいなくなったいきさつなどを説明する。

アリョーシャは、コーリャがイリューシャを元気づけてくれることを期待し、ペレズヴォンを見てコーリャがジューチカを連れてきたと思ったと話す。

第5章「イリューシャの寝床で」の人物相関図とあらすじ

スネギリョフの家ではこの日、カテリーナが手配したモスクワの名医の来診を待っていた。

コーリャはイリューシャの部屋に入りあいさつをした後、ペレズヴォンを呼び寄せ2週間かけて仕込んだ芸を披露する。さらに、イリューシャが前から見たいと言っていた大砲を出し、イリューシャを喜ばせる。

イリューシャの好奇心に応えるように、コーリャは鉄道事件やガチョウ事件を興奮しながら語る。話題はダルダネロフのことから「トロイを建設したのは誰か」問題に及ぶ。無口なカルタショフが「知っている」と突然口をひらく。コーリャは、アリョーシャの無言の視線に不安を覚えるが、知識をひけらかしたいという誘惑から、つい、カルタショフに答えを問いただしてしまう。

コーリャは、人類がおかした愚行を研究する世界史や、治安の手段として能力を鈍らせる古典語を学ぶのはくだらないと吐きすてる。

第6章「早熟」の人物相関図とあらすじ

医者がイリューシャを往診している間、コーリャとアリョーシャは玄関に出て言葉を交わす。

コーリャは、大人っぽくみせようとしたり知識をひけらかせようとしているのは虚栄心のためだ、とアリョーシャに見られてしまうことを懸念し、腹立たしく思いつつもしゃべりすぎてしまう。一方のアリョーシャは、コーリャが自分のことを社会主義者だと言ったり、キリストのことを革命家と言ったりするのを聞き、素晴らしい天性が馬鹿げた話でゆがめられていると嘆く。

アリョーシャが、高潔で感受性の強いイリューシャに対して影響力を持ったコーリャの天性を認めると、コーリャの虚栄心と猜疑心は徐々に消え、コーリャは、アリョーシャに憧れそして好きになったことを素直に打ち明ける。

第7章「イリューシャ」の人物相関図とあらすじ

診察が終わり、希望にすがろうとするスネギリョフに対して医者は軽蔑的な態度で突き放す。この様子を見ていたコーリャは、ペレズヴォンを使って医者を挑発し侮辱しようとするが、アリョーシャから止めるよう強く指示される。

死を受け入れたイリューシャは、悲しむ父スネギリョフを気遣う。そして、自分のことを忘れないでほしい、二人で散歩した大きな石のそばに埋めてお参りしてほしいと伝える。

第11編 兄イワン

第1章「グルーシェニカの家で」の人物相関図とあらすじ

ドミートリーが逮捕されて2か月が過ぎていた。

アリョーシャはグルーシェニカの家を訪れる。

グルーシェニカはアリョーシャを迎え、監獄にいるドミートリーと喧嘩したことを話す。グルーシェニカは、金を無心してくるムシャロヴィチとヴルブレフスキーに金を与えたことで、ドミートリーがやきもちを焼いていると言う。しかし、それは嫉妬深いグルーシェニカへの振りで、本当はカテリーナのことが気になってるんだと憤る。

ドミートリーとイワンは会ってないと聞いていたアリョーシャは、カテリーナからイワンが秘密の事情でドミートリーのところへ通っていることを聞き驚く。

第2章「悪い足」の人物相関図とあらすじ

前日にリーザから、大事な用事があるので家に来るよう頼まれていたアリョーシャは、ホフラコーワ夫人の家に行く。リーザの部屋に行く前に、ホフラコーワ夫人に呼ばれたアリョーシャは、先に夫人の部屋に立ち寄る。

3週間前から体調をくずしていたホフラコーワ夫人は、病身ながら神経を高ぶらせた様子でアリョーシャを迎える。ラキーチンの仕業で、カラマーゾフ事件に関連してペテルブルグの新聞「風聞」に「孤閨をかこつ未亡人」と書かれたこと、そして、ドミートリーは心神喪失により父を手にかけたに違いないとまくしたてる。

さらに、6日前にリーザのところへイワンが来たという話はアリョーシャを驚かせる。ペルホーチンがやってくると、アリョーシャはリーザの部屋へと急ぐ。

第3章「小悪魔」の人物相関図とあらすじ

アリョーシャはリーザの部屋に入る。

リーザはアリョーシャのお嫁になるのを断ってよかったと言い、破滅的な願望を話す。リーザは、寄り添うアリョーシャに助けてほしいと訴えるが、イワン宛の手紙を強引に渡して部屋から送り出す。

第4章「賛歌と秘密」の人物相関図とあらすじ

アリョーシャが監獄の面会室に入ったとき、ドミートリーとの面会を終えて帰ろうとするラキーチンと鉢合わせする。

翌日に控えた裁判を心配するアリョーシャに対し、ドミートリーは神の存在を否定するラキーチンを豚呼ばわりし、イワンが脱走を提案してきたことを打ち明ける。

第5章「あなたじゃない、あなたじゃない!」の人物相関図とあらすじ

イワンの家に向かっていたアリョーシャは、カテリーナの家の近くを通る際に訪ねてみることにした。

アリョーシャは、カテリーナの部屋から引き上げるイワンとともに、カテリーナに対面する。アリョーシャは、ドミートリーから頼まれた、カテリーナと初めて会った時のいきさつを証言しないでほしいことを伝える。

部屋を出たあと、アリョーシャはイワンにリーザからの手紙を渡すが、イワンは封も切らずに破り捨てる。イワンは、ドミートリーがフョードルを殺したことを数学的に証拠立てる文書があると明かす。

アリョーシャはイワンに、父を殺したのはあなたじゃないと告げる。この言葉に動揺したイワンは、アリョーシャに絶交することを言い渡す。

アリョーシャと別れたイワンは、スメルジャコフのところへ向かう。

第6章「スメルジャコフとの最初の面会」の人物相関図とあらすじ

場面は事件の5日後に戻る。

モスクワから戻ったイワンは、アリョーシャに会い、ドミートリーと面会する。そして、入院していたスメルジャコフと面会し、事件前のスメルジャコフの発言の意図や検事らへの証言内容を聞き出す。

イワンは、ドミートリーの犯行を確信しつつ、カテリーナへの情熱にのめりこむ。

しかし、2週間経ったころ、イワンはモスクワに発つ前夜にフョードルの部屋の前で聞き耳を立てた時のことなどを思い出し苦しむ。

第7章「二度目のスメルジャコフ訪問」の人物相関図とあらすじ

イワンは、マリアが移り住む家で世話になっているスメルジャコフに会いにいく。イワンは、すさまじい剣幕でスメルジャコフを問い詰める。スメルジャコフは、あの時のイワンはフョードルの遺産目当てに誰かに殺されることを望んでいたと指摘する。

部屋を出たイワンは、カテリーナの家へ行き、スメルジャコフとのやり取りを伝える。イワンの頭の中は混乱し、フョードルを殺したのがドミートリーではなくスメルジャコフなら、自分も人殺しということになると話す。カテリーナは、イワンにドミートリーが書いた文書を見せる。

その文書は、カテリーナがグルーシェニカに侮辱された一件のあと、ドミートリーがアリョーシャに出会ったあの夜に書かれたものだった。そこには、もし金が手に入らなけば父フョードルを殺して3千ルーブルを奪いとり、カテリーナに金を返すことが書かれていた。

イワンは、ドミートリーの有罪を確信し気持ちが楽になる。

一方で、父を殺したドミートリーへの憎しみを自覚するのと裏腹に、ドミートリーに脱走の計画を提案する。イワンは、脱走を助けようとする自分の心の中に人殺しを疑い苦しむ。そして、カテリーナがスメルジャコフのところへ行ったと叫んだことを思い出し、怒りを覚え、スメルジャコフの家へ走り出す。

第8章「スメルジャコフとの、三度めの、最後の対面」の人物相関図とあらすじ

暗闇の吹雪の中、イワンは歌を歌う酔っぱらいの百姓に出くわす。イワンにはじき飛ばされた百姓は地面に倒れこむ。

イワンを迎え出たマリアは、スメルジャコフは体調が悪く正気とは思えないとささやく。

イワンは、スメルジャコフの部屋に入ると早速、カテリーナが来たことを問いただす。いらだつイワンに対し、スメルジャコフはカテリーナが来ていたことなど忘れた、裁判のことは心配に及ばないと言い放つ。

殺したのはあなたじゃないという言葉に動揺したイワンは、すべてを話せと詰め寄る。スメルジャコフは、主犯はイワンで自分はその手足を務めただけと答える。そして、長靴下の中に隠していた3千ルーブルの札束を取り出し、事件のことを筋道を立てて細かく話し出す。

これを聞いたイワンは、明日の法廷ですべてを明らかにすると言う。スメルジャコフは、これまで「すべては許されている」というイワンの教えに導かれてきたと言い、3人の兄弟の中でフョードルに最も似ているイワンが、法廷で恥をかぶり人生を台無しにすることなどやるはずがないと言い、帰ろうとするイワンに「さようなら」と声をかける。

札束をポケットにねじこみ部屋を出たイワンは、自分を苦しめてきた迷いが消え、幸せすら感じる。道端で倒れていた百姓を介抱し、家に帰ると、ふたたび不安と苦しみにつつまれる。

第9章「悪魔。イワンの悪魔」の人物相関図とあらすじ

部屋に帰ったイワンは、熱に浮かされていることを自覚し、ソファに客人の姿をみる。それは紳士の姿をした幻覚であり、悪魔であった。

客人は、イワンに自分の存在を認めさせようとするかのように話をする。イワンは、目の前の存在に対し、無意識に浮かんできた夢のようなもので、自分の頭の中にあるものを勝手にしゃべっているだけだと否定しようとする。

突然窓枠をたたくノックが聞こえ、やってきたアリョーシャからスメルジャコフが自殺したことが告げられる。

第10章「やつがそう言うんだよ!」の人物相関図とあらすじ

イワンの部屋に入ったアリョーシャは、スメルジャコフの自殺をマリアが発見して警察に報告するまでのことをイワンに伝える。イワンは、さっきまで部屋に悪魔がいて、スメルジャコフが首を吊ったこともそいつから聞いたと言う。

イワンは、部屋に悪魔がいたのは夢じゃないとアリョーシャに言う。さらに、法廷に行くことを決心したのは臆病者だからで、スメルジャコフが死んだのになぜ法廷に行くのかと、我を忘れて自問する。

アリョーシャは、眠ったイワンに付き添い、良心の呵責から病気に苦しむイワンのために祈りを唱えた。

第12編 誤審

第1章「運命の日」の人物相関図とあらすじ

午前10時、裁判が始まる。

裁判長、陪席判事、名誉治安判事の3人の裁判官と、町の役人4人、商人2人、農民と町人6人の計12人の陪審員、検事イッポリート、弁護士フェチュコーヴィチ、そして被告ドミートリーが出席する。

出廷しない4人の証人のうちの1人、スメルジャコフの死が報告されると、ドミートリーは「犬にふさわしい犬死だぜ!」と叫び、フェチュコーヴィチがこれを警告する。

第2章「危険な証人たち」の人物相関図とあらすじ

裁判は当初から、有罪であることに議論の余地のないものと誰もが理解していた。そんな中、弁護士フェチュコーヴィチは、検事側の証人を巧妙に、そして道徳的に貶めていく。

グリーゴーリーに対しては、事件の直前に薬草を浸したスピリッツをコップに1杯半飲んだことを誘導し、ドアが開いていたという証言に疑念を持たせた。

ラキーチンはドミートリー有罪説を強力に裏付ける論文を発表しようとしており、検事側がその内容を引用した。しかし、フェチュコーヴィチは、ラキーチンがグルーシェニカのところにアレクセイを連れて行った報酬として25ルーブルを受け取った話を持ち出し、彼の高貴な印象を傷つけた。

トリフォーンやムシャロヴィチ、ヴルブレフスキーも同様に、フェチュコーヴィチは彼らを道義的にあばき引きさがらせていく。

第3章「医学鑑定とくるみ一袋」の人物相関図とあらすじ

カテリーナの主張で医学鑑定が実施され、弁護側のモスクワの著名な医学博士、検察側のゲルツェンシトゥーベ博士、ワルヴィンスキー医師が鑑定人として出廷する。

ゲルツェンシトゥーベ博士は、被告ドミートリーの知的能力は正常でないと述べる。モスクワの医学博士も、被告の精神状態は異常であると主張する。一方、ワルヴィンスキー医師は、被告は今も昔も完全に正常な状態にあると結論づける。

また、昔からカラマーゾフ家を知るゲルツェンシトゥーベ博士は、幼年期のドミートリーにくるみ一袋をあげたら23年後にお礼に来た話を紹介し、傍聴人に好ましい印象をもたらす。

第4章「幸運の女神がミーチャに微笑みかける」の人物相関図とあらすじ

アリョーシャの証言が行われる。

検事イッポリートの質問に対しアリョーシャは、兄ドミートリーは無実であると確信し、スメルジャコフが犯人と信じていると述べる。そして、弁護士フェチュコーヴィチからの質問にこたえているうちに、修道院に帰る途中にドミートリーに会った夜のことを思い出す。つまり、ドミートリーが胸をたたいたのは、1500ルーブルが入った香袋を示し、その恥辱に苦しんでいたことを証言する。

次にカテリーナの証言が行われる。

カテリーナは、ドミートリーに渡した3千ルーブルが彼を苦しめたことを話す。そして、かつてドミートリーがカテリーナの一家を救うため、なけなしの5千ルーブルを投げ出した話を明かす。

つづいてグルーシェニカの証言が行われる。

グルーシェニカは、腹立たしげな、軽蔑的で乱暴な調子で、捨て鉢な話し方だった。スメルジャコフのことを主人を殺した悪党と言い、ドミートリーを破滅させたのはカテリーナだと話す。

第5章「突然の破局」の人物相関図とあらすじ

イワンが証言台に立つ。その表情には病的な印象がただよう。

イワンは、特別な情報はないと言い法廷から出て行こうとするが、思い直して引き返し、札束を取り出す。札束は、父親を殺したスメルジャコフから受け取ったもので、自分が殺しをそそのかしたと話す。正気を疑う裁判長に対し、証人は悪魔だと言い、やがて騒ぎとなり運び出される。

そして、ヒステリーを起こしたカテリーナが裁判長に向かって叫びだし、例の手紙を差し出す。カテリーナは、良心に苦しむイワンを弁護するため、ドミートリーを裏切った。カテリーナにしてみれば、ドミートリーがカテリーナのことを軽蔑していたと信じ込み、これにたいして復讐心にも似た発作的な愛を育んできたにもかかわらず、ドミートリーに裏切られたことで積年の恨みが吐き出されたのだった。

モスクワの医学博士は、イワンが危険な幻覚症の発作を起こしていると報告した。

第6章「検事による論告。性格論」の人物相関図とあらすじ

検事イッポリートの論告がはじまる。

彼はまず、現代ロシアがおかれた冷笑的な態度と社会の退廃に怯える状況を述べる。そのうえで、カラマーゾフ一家の一人ひとりの人物像を語る。

フョードルについては、その道徳律が「あとは野となれ山となれ」のひとことに尽きると言い、現代の大多数の父親のうちの人であると言う。

イワンについては、兄弟のうち父フョードルにいちばん性格が似ているのはイワンだという、スメルジャコフの言葉を紹介する。

アリョーシャについては、善良かつ才能豊かな青年と評しつつ、ナイーブな理想主義と民衆の原理に向けたひたむきさが、陰気な神秘主義や排他的な民族主義に変わることがないよう願う、と述べる。

そして、被告ドミートリーについては、ロシアの大地のように広大な、振幅の広いカラマーゾフ的気質の持ち主だという。つまり、気高い高潔さと卑しい堕落の両極端が同時に一緒くたにできるのだ分析する。そして、香袋の伝説については現実と矛盾しているとし、ほんもののドミートリーなら、仮に香袋に1500ルーブルを縫い付けていたとしても、使い切ってしまうに違いないと指摘する。

第7章「過去の経緯」の人物相関図とあらすじ

イッポリートは、ドミートリーが正常だと断言する。医学鑑定はお金に対する執着を躁病で説明したが、イッポリートは、ただ興奮し腹を立てていただけで、その原因は嫉妬だと説明する。

そして、カテリーナにあてた手紙が出てきたことによって、犯行の計画性があったことを述べる。

第8章「スメルジャコフ論」の人物相関図とあらすじ

ここで、イッポリートはスメルジャコフ犯人説について検証する。

まず、スメルジャコフの人物像を述べる。正直で臆病で癲癇の持病があること、いくらかの知力で背負いきれないほどの哲学思想を吹き込まれたこと、フョードルには恩義があり、イワンを保護者のように見立てていたことなどを挙げる。

イッポリートはスメルジャコフ有罪説がどこからきたのかを紐解く。事件の日にフョードル邸にいたのは5人(フョードル、グリーゴーリー、マルファ、ドミートリー、スメルジャコフ)で、被告ドミートリーが犯行を否定するには、スメルジャコフを犯人というしかないと指摘する。

続いて、スメルジャコフに容疑をかける不合理さを、事実だけに照らして分析する。単独犯なのか、被告ドミートリーとの共謀なのか、動機は何のか、癲癇の発作は仮病なのか。

そして、犯行の心理を深く推察しながら、犯人の人物像をドミートリーに重ねていく。

第9章「全速力の心理学。ひた走るトロイカ。検事論告の締め」の人物相関図とあらすじ

イッポリートは、「まぎれもない昔の男」つまりムシャロヴィチの存在を認識した、ドミートリーの内面に注目する。ピストル自殺を決心し、モークロエに乗り込んだドミートリーを待ち受けていたものは何だったのか。

そして、逮捕したあとのドミートリーの弁明の浅はかさと、それを追い詰めたイッポリート自身の手腕と手柄を熱っぽく語る。

第10章「弁護人の弁論。両刃の剣」の人物相関図とあらすじ

法廷じゅうが注目する中、フェチュコーヴィチの弁論がはじまる。

フェチュコーヴィチはまず、自分は無実と確信できるか予感される被告しか弁護をしないと説明する。

そして、偏った先入観と心理分析を使えば、都合のよい結論を引き出せることを示し、検事イッポリートの論告は心理学に頼りすぎていると指摘する。

第11章「金はなかった。強奪はなかった」の人物相関図とあらすじ

フェチュコーヴィチは、3000ルーブルは存在しなかった、だから強奪容疑は消滅すると主張する。

3000ルーブルが存在していたという明確な証拠は何もなく、3000ルーブルの存在を前提に組み立てた検事の主張は、憶測を重ねた小説に過ぎないと指摘する。

ドミートリーがフョードル邸に行ったのは、金を奪うためではなく、嫉妬に逆上した勢いでグルーシェニカを探すためだったと説明する。

第12章「それに殺害もなかった」の人物相関図とあらすじ

フェチュコーヴィチは、フョードルを殺害したのはドミートリーではないと主張する。

ドミートリーについて、検事イッポリートが言うような野蛮で冷酷な人間ではなく、敬虔な感情をもつ人間であることを強調する。事件の日に塀から飛び降りたのは、グリーゴーリーの生死を確かめるためではなく、グルーシェニカがいなかったことが分かり、父フョードルを殺さすにすんだことを喜びつつ、つい殴ってしまったグリーゴーリーに同情と憐憫を感じたからだと分析する。

では、だれがフョードルを殺害したのか。フェチュコーヴィチは、イッポリートの論理をなぞり、あの場に居合わせた容疑者2人について、イッポリートとは逆の結論を下す。つまり、スメルジャコフこそが犯人だと主張する。

フェチュコーヴィチは、スメルジャコフの人間像についてイッポリートと全く異なる性質を挙げる。臆病さと純朴さはなく、多くの知力をもち、腹黒く野心的な、復讐心の強い、邪悪な嫉妬心を秘めた男だという。ロシアを呪い、フランスで立身することを夢見るスメルジャコフが、目の前に現れたチャンスにどういう心理で行動したかを描く。

そして、陪審員に対して、事実を個々別々に検討せず、積み上げられた事実の山の影響力に買収され、誤審しないよう訴える。

第13章「思想と密通する男」の人物相関図とあらすじ

フェチュコーヴィチは、父を殺したという恐ろしい印象が強烈であるゆえ、先入観を生むと指摘する。さらに、この事件を父殺しとみなすのは偏見だと断言する。

そもそもフョードルは父親の観念にあてはまらない。真の父親とはなにか。自分を生んだというだけで父を愛せるのか。被告ドミートリーにとって、フョードルは父親と呼ぶに値しない赤の他人であり敵だと言う。

仮にそんな人間を一瞬の錯乱で怒りにまかせて殴ったとしても、それは殺人ではない、父殺しでもなんもないと主張する。

そして、有罪を言い渡すことは、被告の良心の苦しみを軽くするだけだ、あたたかい憐みで圧倒し愛を与えれば、彼の魂は生まれ変わる、と訴える。

第14章「お百姓たちが意地を通しました」の人物相関図とあらすじ

フェチュコーヴィチの弁論のあと、イッポリートは二度目の論告を行う。

イッポリートは、フェチュコーヴィチの弁論は小説の上に小説を築き上げただけのものだと切り捨てる。無罪ではない被告の無罪を勝ち取るため、社会や家庭の基盤をゆがめ、宗教と福音書を修正したと非難する。

フェチュコーヴィチはイッポリートの非難に対して嫌味で応える。

最後に被告ドミートリーは、改めて無実であることを主張し、検事と弁護士に感謝を述べる。

陪審員が協議のため退廷したあと、法廷内には無罪を確信する空気に包まれていた。しかし、1時間後に陪審員が戻り、陪審員長が告げたのは「有罪であります」の言葉だった。

まとめ

【カラマーゾフの兄弟】人物相関図であらすじを理解する

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