小説「罪と罰」は、ドストエフスキーの代表作です。
物語は、基本的には順序どおり記述されていて比較的読みやすいです。
しかし、読み進めていくと、ところどころ時系列があいまいになってしまいます。
なぜなら、途中で「昨日」や「○日前」といった日付をさかのぼる出来事が記述されたり、同じような場面が何度か出てきたりして、順序がよく分からなくなるからです。
そこでこの記事では、物語の記述の順序ではなく、時系列に沿って出来事を整理しました。
時系列を追っていくことで、小説のあらすじをより深く理解することができますので、ぜひご確認ください。
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ここで整理した時系列は、小説の冒頭、つまり第一部の最初の日を「1日目」としています。
小説では、時間は12時間表記ですが、時系列をわかりやすくするため、ここでは24時間表記にしています。
ラスコーリニコフに関する記述が続く場合は、主語を省略しています。
3年前
- ラスコーリニコフは、大学に入るため田舎からペテルブルグへ出てきて、プラスコーヴィヤの下宿に住み、その娘ナターリヤ・エゴーロヴナと結婚の約束をする。
1年前
- ナターリヤ・エゴーロヴナはチブスで死ぬ。
- ラスコーリニコフは、プラスコーヴィヤから、これまでの貸した150ルーブリ分を借用書にするよう言われ、わたす。
半年前
- ラスコーリニコフが大学をやめる。
2か月前
1月半前
5週間前
6日前
- マルメラードフは、官職復帰後の初めての俸給23ルーブリ40コペイカを持ち帰る。
5日前
- マルメラードフは、俸給の残りをかっさらって家出する。
1日目
2日目
- 10時ごろ、ラスコーリニコフはナスターシャに起こされる。
- 母からの手紙を読む。
- 部屋を出て歩く。
- 14時ごろ、酔っぱらいの少女を見かけ、保護を頼んだ巡査に20コペイカを渡す。
- 安食堂風の飲食店でウォトカ1杯とピローグを食べる。
- 眠気を感じ、道端の茂みで寝る。
- 子どもの頃の自分と父親と馬の夢を見る。
- 21時ごろ、センナヤ広場でリザヴェータを見かける。
3日目
- 10時に、ラスコーリニコフはナスターシャに起こされる。
- 14時にナスターシャが持ってきたスープを口にし、眠れないのに夢をみる。
- 18時ごろ外套に輪っかを縫い付ける。
- 部屋を出て、庭番小舎から斧を持ち出す。
- 通りの小店で19時10分を目にする。
- アリョーナの家の門を抜ける前に、時計が19時半をうつ音をきく。
- ラスコーリニコフはアリョーナの部屋で、アリョーナとリザヴェータを斧で殺害する。
- 19時45分ごろ、コッホとペスチャコフがアリョーナの部屋を訪ねてくる。
- ラスコーリニコフはアリョーナの部屋を出て、まわり道をして、家に戻る。
- 20時を少しまわったころ、ミコライがドゥシキンの店にきて、金の指輪と宝石類の入った箱を抵当に2ルーブリを借りる。
4日目
- ラスコーリニコフは2時に目覚め、ポケットの中のものを壁に隠す。
- 10時にナスターシャに起こされ、庭番に警察からの呼出状を渡される。
- 11時ごろに警察署に行く。
- ラスコーリニコフは、イリヤとニコージムが老婆殺し事件の話をしているのを聞いて気を失う。
- 家に帰り、財布と品物全八品をポケットに詰め込んで家を出る。
- エカテリーナ運河とネワ河のほとりをうろつく。
- ヴォズネセンスキー通りの門の内側にある、鐵工所のような仕事場の壁きわの石の下に、ポケットの中のものと財布を埋める。
- ワシーリエフスキー島のラズミーヒンの部屋にいく。
- ニコラエフスキー橋の上で箱馬車の御者に鞭でなぐられる。
- その様子を見ていた商家のおかみに20コペイカ銀貨をもらう。
- 橋の上から見える宮殿の光景に感銘を受け、20コペイカ銀貨を水中へ投げる。
- 夕暮れ近くに家に戻る。
- 意識を失う。
- 薄暗くなった頃、副署長がきておかみを殴る音を聞く。
- ナスターシヤが部屋にパンとスープを持ってくる。
5日目
- 朝8時ごろ(つまり事件の三日目)、ミコライがドゥシキンの店にきて、逃げ出す。
6日目
- アレクセイ・セミョーノヴィチがラスコーリニコフの部屋を訪れる。
- ミコライが逮捕される。
- この日、マルファ・ペトローヴナの葬式が行われている。(不確定)
7日目
8日目
- 10時にラスコーリニコフは起きると、ナスターシヤと組合の男が部屋にいる。
- そこにラズミーヒンがやってくる。
- 11時すぎ、ラズミーヒンは部屋を出る。
- ラスコーリニコフは残っていたビールを飲んで寝る。
- 夕方、プリヘーリヤとドゥーニャはペテルブルグに到着する。
- 18時にラズミーヒンが買った服を持って、ラスコーリニコフの部屋に戻ってくる。
- その後、ゾシーモフがラスコーリニコフの部屋にやってくる。
- ルージンがラスコーリニコフの部屋にやってくる。
- ルージンが怒って帰る。
- ラスコーリニコフは、ラズミーヒンとゾシーモフを部屋から追い出す。
- 20時近く、ラスコーリニコフは部屋を出て行く。
- 水晶宮でザミョートフと話をする。
- N橋でアフロシーニュシカの身投げを目撃する。
- 老婆の部屋に行き、呼び鈴を鳴らしたり、部屋で作業をしていた職人と会話する。
- ラスコーリニコフは、庭番らに「警察に行こう」などと言い、あしらわれる。
- 通りでマルメラードフが馬車にひかれた現場に居合わせる。
- マルメラードフをカテリーナら家族のいる部屋へ運ぶ。
- マルメラードフはソーニャの腕の中で息をひきとる。
- ラスコーリニコフは、マルメラードフの部屋を出たところでニコージム・フォミッチに出会う。
- ラスコーリニコフが通りに出た時、22時をまわっていた。
- ラズミーヒンの引っ越し先の部屋に行く。
- ラズミーヒンと一緒に自分の部屋まで帰る。
- ラスコーリニコフの部屋で待っていたプリヘーリヤとドゥーニャに会い、少し気を失う。
- ラズミーヒンは、プリヘーリヤとドゥーニャを下宿先のバカレーエフのアパートに送る。
- 20分後、ラズミーヒンはラスコーリニコフが寝ていることをプリヘーリヤとドゥーニャに報告する。
- 1時間後、ラズミーヒンはゾシーモフを連れて再びプリヘーリヤとドゥーニャを訪れる。
- ラズミーヒンとゾシーモフはラスコーリニコフのアパートに戻って寝る。
9日目
- 7時過ぎ、ラズミーヒンは目をさます。
- 9時に、ラズミーヒンはバカレーエフのアパートにいるプリヘーリヤとドゥーニャを訪ねる。
- プリヘーリヤはルージンの手紙をラズミーヒンに見せる。
- 10時過ぎ、ルージン、プリヘーリヤ、ドゥーニャの3人は部屋を出て、ラスコーリニコフの部屋に向かう。
- ラスコーリニコフの部屋には、10分前からゾシーモフが来ていた。
- ゾシーモフは途中で退席する。
- ソーニャが部屋にやってくる。
- プリヘーリヤとドゥーニャは、ラスコーリニコフの部屋を出て帰る。
- ラスコーリニコフとラズミーヒン、ソーニャは部屋を出る。
- 通りに出たところでスヴィドリガイロフが一行を目撃し、ソーニャの後をつける。
- ラスコーリニコフとラズミーヒンは、ポルフィーリイの家に行く。ポルフィーリイの家にはザミョートフもいる。
- ポルフィーリイの家を出たラスコーリニコフとラズミーヒンは、バカレーエフのアパートの入り口まで一緒に行くが、ラスコーリニコフは自分の部屋に帰る。
- ラスコーリニコフは、庭番にラスコーリニコフのことを尋ねてきた町人風の男を追いかけ「人殺し」と言われる。
- ラスコーリニコフは、部屋にもどって横になる。
- ラズミーヒンが部屋まで来るが、眠ったふりをし、やり過ごす。
- ラズミーヒンはこの後、ポルフィーリイの家に行く。
- 18時半ごろ、ラスコーリニコフは意識を失い目覚めた時、部屋の戸口にスヴィドリガイロフが立っていることに気付く。まだ明るかったが、もう日が暮れかかっていた。
- 部屋でスヴィドリガイロフと話をする。
- 部屋を出ようとしたスヴィドリガイロフとラズミーヒンが出会う。
- 20時前、ラスコーリニコフとラズミーヒンはバカレーエフのアパートへ急ぐ。
- バカレーエフの廊下でルージンと出会う。
- ラスコーリニコフ、ラズミーヒン、ルージン、プリヘーリヤ、ドゥーニャで話をする。
- ルージンは部屋を出て行く。
- 話の後、ラスコーリニコフは廊下の外れでラズミーヒンを待つ。
- ランプの下でラスコーリニコフと対峙したラズミーヒンは暗示を受ける。
- 23時ごろ、ラスコーリニコフはカペルナウモフの部屋にいるソーニャを訪ねる。
- ソーニャに聖書のラザロの復活を朗読させる。
- スヴィドリガイロフはソーニャの部屋の隣の空き部屋で、二人の会話を盗み聞きする。
- この日、スヴィドリガイロフはレスリッヒ夫人が世話してくれた16歳の娘の家に挨拶に行っている(時間不明)
10日目
- 毛皮職人は警察署に行き、ポルフィーリイに話をし、事務室の仕切りのかげに座らされる。
- 11時にラスコーリニコフは警察署捜査課に出頭する。
- ポルフィーリイと事務室で対峙する。
- 事務所にミコライが入ってきて自白を述べる。
- ラスコーリニコフは自宅に戻り、しばらく考えごとをする。
- 毛皮職人が部屋までやってきて、ラスコーリニコフに「人殺し!」と言ったことを詫びる。
- 朝、ルージンは証券3000ルーブリを現金に換えてきて、レベジャートニコフの部屋で数え直した。
- カテリーナたちが墓地から戻ったあと、レベジャートニコフはソーニャを部屋に連れてくる。
- ルージンはソーニャに10ルーブリ札をわたし、戸口まで送り出す。
- このときルージンはソーニャのポケットに100ルーブリ札を押し込み、レベジャートニコフはこれをしっかり目撃する。
- ラスコーリニコフはカテリーナの家の法事にかけつける。
- ソーニャがカテリーナの家の法事にやってくる。
- カテリーナとアマリヤの一悶着があった後、ルージンがカテリーナの部屋にやってくる。
- 1分後レベジャートニコフもカテリーナの部屋の戸口にやってくる。
- ルージンは、ソーニャに罪をきせようとした企てに失敗し、アパートから出て行く。
- ソーニャも耐えきれなくなり、自分の部屋に戻る。
- アマリヤはカテリーナをアパートから追い出し、カテリーナは往来へかけだす。
- ラスコーリニコフはソーニャの部屋を訪れ、老婆殺しのことを告白する。
- レベジャートニコフがソーニャの部屋に来て、カテリーナが発狂したことを知らせる。
- ソーニャは部屋を飛び出し、ラスコーリニコフとレベジャートニコフもあとを追う。
- ラスコーリニコフは自分の部屋に戻る。
- ドゥーニャがラスコーリニコフの部屋にやってくる。
- ドゥーニャが部屋を出て、ラスコーリニコフが外に出たとき、太陽はしずみかけていた。
- レベジャートニコフはラスコーリニコフを呼び、ソーニャの家の近くで見物人を集めるカテリーナのところへ行く。
- カテリーナは、みっともないことはやめるよう、官吏になだめられる。
- 逃げ出した子供たちを追いかけたカテリーナは転び、血を吐く。
- カテリーナは、近くにあるソーニャの部屋に運ばれる。
- ソーニャの部屋に来た家主のカペルナウモフら群衆の中に、スヴィドリガイロフの姿もある。
- カテリーナが息を引き取る。
- 悲しみに包まれるなか、スヴィドリガイロフはラスコーリニコフにそっと話しかける。
- この日の夕方、ポルフィーリイは誰もいないラスコーリニコフの部屋に入っている。
11日目
12日目
13日目
- ドゥーニャはスヴィドリガイロフからの手紙を受け取る。
- ラズミーヒンは、9日目以来、プリヘーリヤとドゥーニャに会う。
- ラスコーリニコフはクレストーフスキー島から部屋にもどって寝て、午後2時ごろ目を覚ます。
- ラズミーヒンが部屋にやってくる。
- 二人で話をした後、ラズミーヒンは部屋を出て行く。
- ラスコーリニコフは考え事をした後、出て行こうと入り口のドアを開けたとき、ポルフィーリイと出会う。
- ポルフィーリイはラスコーリニコフに自白を勧める。
- ポルフィーリイは出ていき、時間をおいてラスコーリニコフも部屋を出る。
- センナヤ広場の近くの2階が全部居酒屋になっている建物の居酒屋で、スヴィドリガイロフと対峙する。
- ラスコーリニコフは、居酒屋を出て別れようとするスヴィドリガイロフから離れず、スヴィドリガイロフの部屋までついていく。
- ラスコーリニコフは、部屋から出てスヴィドリガイロフが馬車に乗ったところで諦める。
- 橋のたもとでドゥーニャに出会うが、見向きもせず通りすぎる。
- ラスコーリニコフは翌日までネワ河のほとりを歩きまわる。
- ドゥーニャはスヴィドリガイロフから呼ばれ、スヴィドリガイロフの部屋までついていく。
- 口論となり、ドゥーニャは持っていた拳銃でスヴィドリガイロフを狙うが、一発目は右のこめかみをかすめ、二発目は不発に終わる。
- ドゥーニャは拳銃を投げ出し、スヴィドリガイロフのことを拒絶し、部屋を飛び出す。
- スヴィドリガイロフは拳銃をポケットに入れ部屋を出て、22時ごろまで居酒屋や魔窟を飲み歩く。
- スヴィドリガイロフは部屋に帰る。
- スヴィドリガイロフはソーニャの部屋にいき、3000ルーブリ分の五分利債券をわたす。
- 23時20分、スヴィドリガイロフはワシーリエフスキー島のマールイ通り三丁目にある許嫁の家を訪れ、15000ルーブリを渡す。
14日目
- 0時、スヴィドリガイロフは30分近く歩いて、宿屋アドリアノポールに入る。
- スヴィドリガイロフは熱にうかされ、想念が入りみだれる。
- 5時、スヴィドリガイロフは宿をでて、ペトロフスキー島へ向かうが、途中、望楼のある大きな家の前で、拳銃を右のこめかみに当て、引鉄をひく。
- 朝、ドゥーニャはソーニャの部屋にいき、ラスコーリニコフがやって来るのを一緒にまつ。
- 18時過ぎ、ラスコーリニコフはバカレーエフのアパートにいるプリヘーリヤに会いに行く。
- ラスコーリニコフは自分の部屋に戻ると、そこで待っていたドゥーニャに、無用の恥辱を受けにいく決意を伝える。
- 部屋を出た二人は、通りで別れる。
- ラスコーリニコフはソーニャの部屋にいき、糸杉の十字架を受け取る。
- ラスコーリニコフは、ソーニャに別れを告げず部屋を出て、センナヤ広場にいく。
- ソーニャは離れてラスコーリニコフの後をついていく。
- ラスコーリニコフは広場の中央でひざまづき、地面に頭をすりつける。
- 警察署にいき、イリヤ・ペトローヴィチからスヴィドリガイロフが自殺したことを聞き、一度部屋をでる。
- 庭にいたソーニャと顔を合わせたあと、また警察署へのぼっていき、イリヤ・ペトローヴィチに自供する。
事件から5ヶ月後(12月)
- ラスコーリニコフの判決(第二級の強制労働で8年の刑期)が下される。
事件から7ヶ月後(2月)
事件から8ヶ月後(3月)
事件から9ヶ月後ごろ(4月ごろ)
時系列を追っていくことで、小説のあらすじをより深く理解することができます。
読んでいてあいまいな出来事が出てきた時は、この記事でふりかえってみてください。
「罪と罰」の登場人物の一覧はこちらから。
主要人物からマイナーなキャラまで全て網羅しています。
【罪と罰】登場人物一覧と解説