回転寿司のサーモンといえば、大人も子どもも大好きな人気ネタのひとつですよね。
日本最大の水産会社であるマルハニチロが発表した「回転寿司に関する消費者実態調査 2022」からも、サーモンの圧倒的な人気ぶりがわかります。
- 回転寿司店でよく食べるネタ「サーモン」が11年連続で1位に
- 回転寿司店で最もよく食べるネタ1位「サーモン」2位「マグロ(赤身)」3位「ハマチ・ブリ」
- 回転寿司店で最初に食べるネタ 1位「サーモン」2位「マグロ(赤身)」3位「ハマチ・ブリ」
- 回転寿司店でシメに食べるネタ 1位「サーモン」「マグロ(中トロ)」3位「エビ」「玉子」
- 回転寿司店で 1.5 倍の価格に値上がりしても食べたいネタ1位「サーモン」2位「マグロ(中トロ)」
この人気ネタのサーモンは、回転寿司店のメニューでは単に「サーモン」と呼ばれています。
あなたが回転寿司店で食べるサーモン、どこでとれた何の魚を「サーモン」として食べているのか知っていますか?
- 回転寿司は、安くて美味しければ原料はなんでもいい?
- 美味しくても、原産国が分からないと不安?
この記事では、回転寿司チェーン店のサーモンが、どこの、何の魚が使われているのかについて、調べた結果をまとめした。
結論からいうと、原産地どころか魚種の特定すらほぼ不可能ということがわかりました。
サーモンと聞くと、生食用のサケ身を思い浮かべるのではないでしょうか?
英語ではサーモン(salmon=さけ)ですが、日本では「サーモン」の明確な定義はありません。
ここでは、日本で一般的にサーモンと呼ばれている魚を紹介します。
- ニジマス
- マスノスケ
- ベニザケ
- ギンザケ
- タイセイヨウサケ
ちなみにこのサーモンと呼ばれる魚をまとめていくと、サケ科サケ属またはサルモ属に分類される魚、ということになります。
日本でサーモンと呼ばれている魚種をひとつずつ見ていきます。
ニジマス(トラウトサーモン)
ニジマスの学名はOncorhynchus mykissで、日本では「マス」の仲間とされています。
え?サケじゃなくてマスの仲間?
と疑問に思った方には、国立研究開発法人水産研究・教育機構の説明がわかりやすいです。
Q1:「さけ」と「ます」の違いは?
結論から言いますと、生物学的に明確な区分はありません。
サケという名の魚はいますが、「ます」というのはサクラマス、カラフトマス、ニジマスなど複数の魚を総称しており、かつ、そのますと称される魚だけに共通するようなサケとの違いはありません。
英語では「サーモン」と「トラウト」という呼び方がありますが、欧米では海に降りるものをサーモン、川など淡水で生活するものをトラウトとしている場合が多く、近年は日本でもサーモン=さけ、トラウト=ますと認識している例も一部でみられるようです。
日本でなぜサケとマスという呼び分けができたかについて一説を紹介します。
日本で昔からそ上が見られたさけ・ますはサケとサクラマスであり、当時はサケとマスで区別には十分でした。しかし蝦夷地の開拓が進むと道東方面に別種のさけ・ますが分布しており、サクラマスとカラフトマスという呼び分けが必要になりました。
さらに北洋さけ・ます漁業が始まると日本には分布しないものも漁獲され、漁業者はそれらをベニマス、ギンマスなどと呼び分けました。この時点ではサケだけが特別で、その他はすべて○○マスで統一されていました。
しかしながら、流通させるに当たってマスよりサケの方が高級イメージがあったので、ベニザケ、ギンザケという呼び名で販売されるようになり、それが定着して今日に至っているということです。
国立研究開発法人水産研究・教育機構「さけますQ&A」より
「マスよりサケの方が高級イメージがあった」というのは興味深い指摘ですね。
品種改良し海面養殖したニジマスは、「トラウトサーモン」や「サーモントラウト」、単に「トラウト」とも呼ばれています。
消費者庁の通達にもニジマスの一般的名称例として「サーモントラウト」が示されています。
「食品表示基準Q&Aについて(平成27年3月30日消食表第140号)」別添「魚介類の名称のガイドライン」別表2「海外漁場魚介類及び外来種の名称例」
身色は鮮やかな濃いオレンジ色。
適度な脂とプリッとした食感が特徴で、刺身や寿司などに利用されています。
マスノスケ(キングサーモン)
マスノスケの学名はOncorhynchus tshawytschaで、スーパーなどではキングサーモンとして流通しています。
消費者庁の通達でもマスノスケの一般的名称例として「キングサーモン」が示されています。
「食品表示基準Q&Aについて(平成27年3月30日消食表第140号)」別添「魚介類の名称のガイドライン」別表1「国産の生鮮魚介類の名称例」
サケ類の中でも脂肪分が多く、また繊維が細くとろけるような食感が特徴です。
ベニザケ
ベニザケの学名はOncorhynchus nerka。
他のサーモンと呼ばれる魚と違って、ベニザケはほぼ100%が天然物です。
塩鮭として日本の食卓でも馴染みの深い品種です。
ギンザケ
ギンザケの学名はOncorhynchus kisutch。
焼き鮭や切り身のシャケといえばこのギンザケが使われていることが多いです。
焼いたり煮たり、加熱調理して食べることが多いですが、海面養殖された生食用も流通しています。
日本でもご当地サーモンとして、生食用の銀鮭が生産されています。(例:株式会社マルキンの銀王)
タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)
タイセイヨウサケの学名はSalmo salarで、一般にはアトランティックサーモンとして知られています。
消費者庁の通達でもタイセイヨウサケの一般的名称例として「アトランティックサーモン」が示されています。
「食品表示基準Q&Aについて(平成27年3月30日消食表第140号)」別添「魚介類の名称のガイドライン」別表2「海外漁場魚介類及び外来種の名称例」
アトランティックサーモンといえば、コストコで見かけるあの大容量のサーモンです。
イオンなどのスーパーでもよく見かけます。
脂肪分が多く、寿司店ではとろサーモンとして提供されることも多い品種です。
回転寿司チェーン店大手5社のサーモンが、どこの、何の魚を使っているのか調べていきます。
結論をまとめたのが下表です。
回転寿司店 | 魚種が特定できるか? | 原産地が特定できるか? |
---|---|---|
スシロー | 特定できない | ほとんど特定できない |
くら寿司 | 特定できるメニューがある | 特定できない |
はま寿司 | 特定できない | 特定できない |
かっぱ寿司 | 特定できない | 特定できない |
魚べい | 特定できない | 特定できない |
スシローのサーモン
スシロー公式サイトの原産地情報をもとに調べました。
スシローのレギュラーメニューで、メニュー名に「サーモン」が含まれているのは9種類です。
メニュー | 原産地 |
---|---|
サーモン | さけ:ノルウェー・チリ・その他 |
オニオンサーモン | さけ:ノルウェー・チリ・その他 |
焼とろサーモン | さけ:ノルウェー・チリ・その他 |
おろし焼とろサーモン | さけ:ノルウェー・チリ・その他 |
ジャンボとろサーモン | さけ:ノルウェー・イギリス・その他 |
サーモンちーず | さけ:ノルウェー・チリ・その他 |
炙りサーモンバジルチーズ | さけ:ノルウェー・チリ・その他 |
生サーモン | さけ:ノルウェー・日本 |
サーモンバジルモッツァレラ | さけ:ノルウェー・チリ・その他 モッツァレ:(ナチュラルチーズ)日本 |
サーモンメニューの全ての原材料は「さけ」の表記のみで、魚種の表記は一切ありません。
原産地は、サーモンメニュー9種類のうち7種類が「ノルウェー・チリ・その他」という同じ表記になっています。
「その他」が表記されている時点で原産地は特定できません。
ちなみに、チリとノルウェーは、さけ・ます類の輸入先1位と2位の国です。
ジャンボとろサーモンの原産地は、ノルウェーのほかイギリスが入っています。
サーモンメニュー9種類のうち、生サーモンのみ「その他」の表記がないので、原産地がノルウェーと日本に特定できます。
くら寿司のサーモン
くら寿司の公式サイトにある原材料・原産地情報をもとに調べました。
くら寿司の定番メニューで、メニュー名に「サーモン」が含まれているのは4種類です。
品名 | 主な原材料 | 原料原産地 |
---|---|---|
あぶりチーズサーモン | アトランティックサーモン サーモントラウト ギンザケ | チリ等 |
オニオンサーモン | アトランティックサーモン サーモントラウト ギンザケ | チリ等 |
サーモン | アトランティックサーモン サーモントラウト ギンザケ | チリ等 |
とろサーモン | アトランティックサーモン | ノルウェー等 |
くら寿司の原材料情報を公開する姿勢は評価できます。
なぜなら、大手回転寿司チェーンの中で唯一、サーモンの魚種を明確にしているからです。
特に「とろサーモン」は、原材料がアトランティックサーモンのみとなっていますので、魚種が特定できます。
原料原産地の国名に「等」をつけているのが惜しいですね。
はま寿司のサーモン
はま寿司公式サイトの原産地情報をもとに調べました。
はま寿司の定番メニューで、メニュー名に「サーモン」が含まれるのは16種類あります。
食品名 | 主要食材 | 原産地 |
---|---|---|
大とろサーモン (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
大とろサーモン山わさび (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
オニオン大とろサーモン (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
大切り大とろサーモン (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
大切り大とろサーモン山わさび (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
焼とろサーモン | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
炙りとろサーモン | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
炙りとろサーモンチーズ | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
焼とろサーモンおろし盛り | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
サーモン | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
ゆず塩サーモン (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
オニオンサーモン | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
サーモンアボガド | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
サーモン山わさび (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
サーモン三種盛り (一部店舗のみ) | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
サーモン旨辛ネギ盛り | サーモン | ノルウェー王国・チリ共和国・フェロー諸島・イギリス・デンマーク |
見てのとおり主要食材と原産地は全て同じ表記となっています。
主要食材はサーモンと書かれているのみで、魚種は書かれていません。
原産地は日本のさけ・ます類の主な輸入先を網羅したような書き方となっており、特定できません。
食材の説明としてはほぼ意味をなしていないですね。
かっぱ寿司のサーモン
かっぱ寿司の公式サイトにある原産地情報をもとに調べました。
品名 | 原産地 |
---|---|
キングサーモン | ニュージーランド |
サーモン | チリ・ノルウェー・デンマーク・イギリス・ロシア・日本・トルコ |
とろサーモン・焼きサーモン | チリ・ノルウェー・デンマーク・イギリス・ロシア・スウェーデン・アイスランド・エストニア・トルコ・フェロー諸島・スコットランド・ポーランド |
サーモンの原材料となる魚種の表記はありません。
原産地は日本のさけ・ます類の主な輸入先を網羅したような書き方となっており、特定できません。
品名「キングサーモン」が掲載されていますが、メニュー情報には「キングサーモン」はないため誤記載と思われます。
魚べいのサーモン
魚べいの公式サイトにある原産地一覧表をもとに調べました。
商品名 | 原産地 |
---|---|
オニオンサーモン | サーモン:チリ他 |
サーモン | サーモン:チリ他 |
サーモン・焼きサーモン | サーモン:チリ他 焼きサーモン:ノルウェー、チリ他 |
サーモンねぎラー油 | サーモン:チリ他 |
サーモンペッパーマヨ炙り | サーモン:チリ他 |
サーモンペッパーマヨ炙り(ペッパーなし) | サーモン:チリ他 |
大切りとろサーモン | とろサーモン:ノルウェー他 |
大切りとろサーモン炙り | とろサーモン:ノルウェー他 |
まぐろ・サーモン | サーモン:チリ他 |
焼きサーモン | 焼きサーモン:ノルウェー、チリ他 |
サーモンアボカドぐんかん | サーモン:ノルウェー他 |
サーモンの原材料となる魚種の表記はありません。
原産地はチリとノルウェーが使い分けられていますが、全てに「他」がついているため、特定はできません。
日本で消費されるさけ・ます類は、大半が輸入されています。
全体像を概観するため、さけ・ます類の国内生産量と輸入量の推移をグラフ化しました。
- 国内生産量は、2003年の約32.6万トンをピークに減少している。
- 輸入量は、年間25万トン前後で横ばい。
- 2010年以降は、輸入量が国内生産量より多くなっている。
さけ・ます類の国内生産量:食糧需給表(農林水産省)「主要魚介類・海藻類の国内生産量の内訳」 さけ・ます類の輸入量:農林水産物輸出入統計(農林水産省)「さけ・ます(生・蔵・凍)(紅ざけ、ぎんざけ)」
これで輸入の全体像は分かりますが、さけ・ます類がひとくくりにされていますので、魚種と輸入先国をもう少し細かく分解していきます。
貿易統計を使って調べます。
貿易統計とは、関税法の規定に基づき、日本から外国への輸出及び外国から日本への輸入について、税関に提出された輸出入の申告を集計し、定期的に公表しているものです。
財務省「貿易統計の概要」より
貿易統計におけるサーモンの種類による分類
貿易統計では、輸入品の国別の数量と金額を品目ごとに指定して調べることができます。
最初に、サーモンと呼ばれる魚が具体的にどの品目に含まれているのかを調べておく必要があります。
輸入品の場合は、税関の実行関税率表を参照します。
第1部第3類「魚並びに甲殻類、軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物」を見ると、品名欄に魚種らしいカタカナが並んでいるのが分かります。
このカタカナは、魚の学名をカナ表記しているものです。
生物の学名は世界共通でラテン語と決まっていて、イタリック体(斜体文字)で表記します。
学名
生物の学術上の名称のことです。国際的に統一して使用するために、ラテン語で表記されます。種の名称は2語で示されます。たとえば、ウナギの学名はAnguilla japonicaです。前の方の名称は属名、後ろの名称は種小名といいます。属名と種小名は、我々の「姓」と「名」のようなものです。似た種をまとめたものが属です。
(中略)
属名と種小名は習慣的にイタリック体で表記します。
国立科学博物館魚類研究室「魚類の学名と和名」より
困ったことに、この学名に対応する日本語表記はネット検索でもヒットしません。
なぜなら、ラテン語には決まった発音がないからです。
これでは先に進まないので、学名と英名と和名を一覧表にまとめました。
貿易統計では、ます(トラウト)、太平洋さけ、大西洋さけの3品目に分かれています。
輸入統計では、英名でトラウト(trout)にあたる魚種が「ます」に分類されていることが分かります。
つまり、オンコルヒュンクス・ミキスでサーモントラウトであるニジマスは、輸入統計上は「ます」に計上されることになります。
輸入統計品名(学名カナ) | 学名 | 英名 | 和名 |
---|---|---|---|
サルモ・トルタ | Salmo trutta | Brown trout | ブラウントラウト |
オンコルヒュンクス・ミキス | Oncorhynchus mykiss | Rainbow trout | ニジマス |
オンコルヒュンクス・クラルキ | Oncorhynchus clarki | Cutthroat trout | ノドキリマス |
オンコルヒュンクス・アグアボニタ | Oncorhynchus aguabonita | Golden trout | ゴールデントラウト |
オンコルヒュンクス・ギラエ | Oncorhynchus gilae | Gila trout | ギラトラウト |
オンコルヒュンクス・アパケ | Oncorhynchus apache | Apache trout | アパッチトラウト |
オンコルヒュンクス・クリソガステル | Oncorhynchus chrysogaster | Mexican golden trout | ー |
輸入統計では、英名でサーモン(salmon)と呼ばれる魚種が「太平洋さけ」に分類されていることが分かります。
つまり、オンコルヒュンクス・トスカウィトスカでキングサーモンであるマスノスケは、太平洋さけとして輸入されます。
後述しますが、貿易統計ではベニザケとギンザケは太平洋さけの小分類として個別に計上されています。
輸入統計品名(学名カナ) | 学名 | 英名 | 和名 |
---|---|---|---|
オンコルヒュンクス・ネルカ | Oncorhynchus nerka | Sockeye salmon | ベニザケ |
オンコルヒュンクス・ゴルブスカ | Oncorhynchus gorbuscha | Pink salmon | カラフトマス |
オンコルヒュンクス・ケタ | Oncorhynchus keta | Chum salmon | サケ |
オンコルヒュンクス・トスカウィトスカ | Oncorhynchus tschawytscha | Chinook salmon, King salmon | マスノスケ |
オンコルヒュンクス・キストク | Oncorhynchus kisutch | Coho salmon | ギンザケ |
オンコルヒュンクス・マソウ | Oncorhynchus masou | Masu salmon | サクラマス |
オンコルヒュンクス・ロデュルス | Oncorhynchus rhodurus | Biwa salmon | ビワマス |
貿易統計で大西洋さけに分類されるのは2種類だけです。
サルモ・サラルでアトランティックサーモンであるタイセイヨウサケが、大西洋さけに分類されています。
輸入統計品名(学名カナ) | 学名 | 英名 | 和名 |
---|---|---|---|
サルモ・サラル | Salmo salar | Atlantic salmon | タイセイヨウサケ |
フコ・フコ | Hucho hucho | Danube salmon | ドナウイトウ |
貿易統計における製品形態による分類
貿易統計は、魚の種類だけでなく製品形態でも分類されています。
さけ・ます類が輸入される製品形態は以下の3種類です。
- 生鮮および冷蔵
- 冷凍
- フィレ
貿易統計におけるさけ・ます類のHSコード一覧
財務省貿易統計のサイトでさけ・ます類の輸入統計を調べる場合は、対象となる品名のHSコードを指定する必要があります。
「HSコード」は、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたコード番号です。
HSコードは、日本語で「輸出入統計品目番号」、「関税番号」、「税番」などと呼ばれることもあります。
日本貿易機構より
具体的には、「製品形態 × 魚の種類」のHSコードが登録されています。
税関の実行関税率表から、さけ・ます類のみのHSコードをまとめました。
HSコード (品目コード) | 製品形態 | 魚の種類 |
---|---|---|
0302.11-000 | 生鮮・冷蔵 | ます |
0302.13-011 | 生鮮・冷蔵 | べにざけ |
0302.13-012 | 生鮮・冷蔵 | ぎんざけ |
0302.13-019 | 生鮮・冷蔵 | その他太平洋さけ |
0302.14-000 | 生鮮・冷蔵 | 大西洋さけ |
0303.11-000 | 冷凍 | べにざけ |
0303.12-010 | 冷凍 | ぎんざけ |
0303.12-090 | 冷凍 | その他太平洋さけ |
0303.13-000 | 冷凍 | 大西洋さけ |
0303.14-000 | 冷凍 | ます |
0304.41-000 | フィレ(生鮮・冷蔵) | 太平洋さけ、大西洋さけ |
0304.42-000 | フィレ(生鮮・冷蔵) | ます |
0304.81-000 | フィレ(冷凍) | 太平洋さけ、大西洋さけ |
0304.82-000 | フィレ(冷凍) | ます |
「太平洋さけ」のうち製品形態が「生鮮・冷蔵」と「冷凍」の場合は、統計細分として「べにざけ」と「ぎんざけ」が個別に計上されています。
さけ・ます類の2021年の年間統計から読み取れる特徴を上げていきます。
- 日本のさけ・ます類の輸入先は、多い順にチリ、ノルウェー、ロシア、アメリカ合衆国、オーストラリア。
- チリ、ノルウェー、ロシアの3カ国で輸入量の9割を占めている。
次に、輸入量の多い上位3カ国を分析します。
原産国から魚種を特定するのは難しいことがわかりますが、国ごとに取り扱う魚種や製品状態が大きく異なっています。
貿易統計から読みとれるチリ産サーモンの特徴
- 全体の7割弱が冷凍のぎんざけである。
- 製品形態別にみると、9割以上が冷凍で輸入されている。
魚種 | 製品形態 | 輸入量 [トン] | 単価 [円/kg] |
---|---|---|---|
ます | 冷凍 | 5,014 | 778 |
ます | フィレ(冷凍) | 16,824 | 1,344 |
ぎんざけ | 冷凍 | 110,460 | 623 |
大西洋さけ | 生鮮・冷蔵 | 11 | 917 |
大西洋さけ | 冷凍 | 532 | 533 |
太平洋さけ、大西洋さけ | フィレ(生鮮・冷蔵) | 335 | 1,339 |
太平洋さけ、大西洋さけ | フィレ(冷凍) | 27,393 | 1,053 |
貿易統計から読みとれるノルウェー産サーモンの特徴
- 生鮮・冷蔵状態の大西洋さけの取扱いが多いのが特徴的である。
- 製品形態別にみると、フィレが多く、生鮮・冷蔵が多い。
魚種 | 製品形態 | 輸入量 [トン] | 単価 [円/kg] |
---|---|---|---|
ます | 生鮮・冷蔵 | 535 | 1,105 |
ます | 冷凍 | 2,315 | 753 |
ます | フィレ(生鮮・冷蔵) | 1,661 | 1,477 |
ます | フィレ(冷凍) | 2,105 | 1,581 |
大西洋さけ | 生鮮・冷蔵 | 13,380 | 1,062 |
大西洋さけ | 冷凍 | 642 | 841 |
太平洋さけ、大西洋さけ | フィレ(生鮮・冷蔵) | 21,297 | 1,413 |
太平洋さけ、大西洋さけ | フィレ(冷凍) | 1,220 | 1,757 |
貿易統計から読みとれるロシア産サーモンの特徴
- 輸入量全体の7割弱が冷凍のべにざけである。
- 製品形態別にみると、9割以上が冷凍状態で輸入されている。
魚種 | 製品形態 | 輸入量 [トン] | 単価 [円/kg] |
---|---|---|---|
ます | 冷凍 | 14 | 766 |
べにざけ | 冷凍 | 15,170 | 994 |
ぎんざけ | 冷凍 | 184 | 549 |
その他太平洋さけ | 冷凍 | 3,414 | 486 |
太平洋さけ、大西洋さけ | フィレ(冷凍) | 3,369 | 924 |
サーモンは回転寿司でもっとも人気のあるネタです。
一方で、大手回転寿司チェーン店のサーモンは、原料の魚種と原産地がほぼ特定できないことがわかりました。
回転寿司店 | 魚種が特定できるか? | 原産地が特定できるか? |
---|---|---|
スシロー | 特定できない | ほとんど特定できない |
くら寿司 | 特定できるメニューがある | 特定できない |
はま寿司 | 特定できない | 特定できない |
かっぱ寿司 | 特定できない | 特定できない |
魚べい | 特定できない | 特定できない |
- 回転寿司は、安くて美味しければなんでもいい?
- 美味しくても、原料や原産国が分からないと不安?
回転寿司のサーモンが「どこでとれた何の魚なのか分からない」ということをどう評価するか。
それは、食べる人次第です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
回転寿司と並んで人気のある外食といえば焼肉ですね。
焼肉食べ放題のお店とコースの選び方が分かるこちらの記事もどうぞ。
【グラフで比較】焼肉食べ放題でおすすめは?独自調査ランキング